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闇を愉しむ

闇と言っても、真っ暗闇ではありません。

うっすらと陰ができるくらいの

ほの暗い、ぼんやりとした闇です。

昭和の文豪、谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」の中で

漆器は、陰翳のある家屋の中で映え、より一層その美しさを増す。

と書いています。

京都の馴染みの料亭は、

彼が訪れると電気を消して蝋燭を灯したといわれるほどです。

秋もすっかり深まり、つるべ落としの日は落ちて

あのギラギラした夏の陽射しなど思い出すこともできないほど。

夜が日に日に長くなっていきます。

闇を愉しむ季節が訪れた、ということなのですね。

耽美主義作家、谷崎潤一郎は

女性はもとより、美しいものをこよなく愛しました。

美しいモノ、というよりは美そのものを愛していた、と言ったほうが良いかも知れません。

物体にあるのではなくて物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にある、と。 

夜目、遠目、笠の内。

この3つのシチュエーションは女性が最も綺麗に見えるそうな。

どれもハッキリとは見えない状態です。

そして、どれも陰の明暗ができる状態でもあります。

綺麗に見せたい女性と、夢を見ていたい男性は

どうにかしてこの状態を作り出すことをオススメします。 

さて、ほの暗い中での漆器が美しいことに加えて

もうひとつ。

視界が制限されると、自然と感覚が研ぎ澄まされます。

特に聴覚と触覚。 

漆器が触れ合う中で生まれる音は、さながら微かな木琴のよう。

そして、なめらかでほんのり温かい感触は、美しい女性の肌のよう。 

お食事に、そんな愉しみが加わったら•••

ドキドキしませんか?