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あなたは○○になります

 

その人はまっすぐに私を見て、手を握りながらそう言った•••

· 占い,引っ越し,運命,占い師,未来

そんなこと突然言われても・・・

と、照れたわけでも戸惑ったわけでもない。

ただなんとなく、あぁそうなのかと

なかばホッとしたのだ。

長く住んでいた関東を離れて、神戸へと移り住んで早や5年。

日本とアメリカ西海岸と、ゆうに10回以上の引っ越しを繰り返していた私が、

初めて、「ここにずっと住もう」

そう思った。

それほど神戸は魅力的な街。

何度も引っ越しを重ねてきたけれど、

なんのことはない、東京、神奈川をグルグルと巡っていただけ。

狭いところで右往左往していただけだったから

関西の地に降り立ったときは、毎日が刺激的で驚くことばかりだった。

たとえば、女性専用車両。

関東では端っこの車両だから、雨でも降ろうものならびしょ濡れになるし、階段からも遠い。

小さな子どもや赤ちゃん連れのママには不便極まりない。

ところが、だ。

関西の電車の女性専用車両はど真ん中。

階段からもエレベーターからも近い。

いつも屋根の下だから雨が降っても大丈夫。

関西って、女性に優しいところなのね。

それから、関西には占い屋さんが多い。

商店街の中にポツポツと占いの文字を見かける。

東京都内の某所、週末や夏休みには近県から中高生が遠足のように集まってくるところには

占いの館とかあったけれど、もう少しオトナ向けの

○○の母とかいうのは、新宿や大泉くらいしか知らない。

しかも、その鑑定料はとんでもなく高かったりする。

少なくとも商店街にある感じではなかったなぁ。

そんなこんなで、商店街の占い屋さんにはちょっぴり違和感があったから、

2〜3年ほどは目の端にとどめながらも素通りしていた。

それが、だ。

バイオリズムなのか天中殺なのか、はたまた大殺界なのか。

どうにも調子が悪い、することなすこと裏目に出る。

そんな時が訪れた。

考えても考えてもどうしたら良いのか分からない。

考えてもダメなもんはダメでしょう、とばかりに

いきおい悪い方へ悪い方へと思い悩む。

そうするうちに体調さえも悪くなってきている、ような気がしてきた。

マイナス思考の泥沼にどっぷりはまり込んで身動きも取れない。

気がつくと、フラフラと商店街を徘徊していた。

どういうわけか「占い」の文字がやたらと目に飛び込んでくる。

そう、その日私は引き寄せられるように「占い」の看板のある方へと吸い込まれていった。

この絶不調の時期が人生最大の幸運期ですなんて言われたらどうしよう・・・

やめておこうか・・・でも、このまま帰っても気になって仕方がない。

夢遊病患者のように漂ったあげく、なんとなく目の前にあった椅子にストンと座った。

好々爺、という言葉がピッタリのおじいさんが目の前にいた。

フォッフォッフォッ、って笑い声をあげそうな

桃太郎電鉄の記念仙人みたいな・・・

どれどれ、ふむふむ、ほぉぉ、さてさて、なるほど・・・

絵に描いたようなセリフに、妙な安心感をおぼえた。

占い仙人いわく、

去年までが調子の上がらない時期で、今年からは良くなるけれど

切り替えがうまくいってないから良くないことが続くように感じるらしい。

でも、ここからはうなぎ登りに良くなっていくよ。

表現が好々爺らしくて笑ってしまう。

その先は、いかに恵まれていて幸せな人生をおくるかを

とうとうと語ってくれた。

終いには、こんなに良い運勢なのに何が気に入らないのかと叱られる始末。

運気が悪いときは、冒険せずに静かに学びなさい。

運気が良いときは、臆せず行動に移しなさい。

それでも人間だから疲れるときもある。

そんなときは、美味しいもの食べてゆっくり休みなさい。

弱っているときは、大切な人のそばにいると回復が早いよ。

早く元気になぁれ、と思ってくれる人のそばにいるのがいいね。

大丈夫、あなたは幸せになります。

だから、幸せになる準備をしておきなさい。

 

爺さまは私の手を撫でながらそう言った。