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初めて Fly me to the moon を聴いたのは「新世紀エヴァンゲリオン」
あの、誰も幸せにならないアニメ。
海の中に沈んでいく映像と相まって、この曲を暗く切ないものにさせていた。
月へ連れてって、星々の中で遊ばせて、と遠い宇宙に視点が飛んでいて
地上での出来事から逃避するかのようだ。
さらに、いろいろな表現で大好きな気持ちを伝えるのだけれど、
Please be true というところでドキっとさせられる。
誠実でいて、嘘をつかないで、「本当のことを言って」と訳する人もいる。
不安な気持ちが見え隠れする感じがした。
あなたのこと好きだから別にいいけどね、と強がりながらも
不安な気持ちが口をついて出てしまったというような、
心の奥に静かに澱が積もっていく気がしていた。
*
お気に入りの歌姫がいる。
全身の毛穴から音が入り込んでくるような感覚になる彼女の歌のファンは多い。
先日、彼女のコンサートでFly me to the moonを聴いて驚いた。
リズムもテンポも、そして歌う彼女の表情もためらいなく明るい。
エヴァンゲリオンのそれとは真逆の、まるで違う曲かと思うほど
軽くて、楽しげだった。
ウソついたら許さないわよ、とウインクするかのような
キュートな女性がそこにいた。